オペアンプの周波数特性を考えるとき、ゲインのボード線図を見ます。
「どの極をどこに置けば、ユニティゲイン周波数や位相余裕がどう決まるのか」
を直感的かつ定量的に理解することは、周波数特性の理解にとって重要です。
この記事では、オペアンプを2次遅れ系(2極モデル)で近似し、
- ユニティゲイン周波数
- 位相余裕(Phase Margin)
- 極配置と安定性の関係
を、できるだけシンプルな数式で整理します。
オペアンプを2次遅れ系で表す
多くのオペアンプは、周波数特性を「支配的な2つの極」で近似できます。
このとき、開ループゲインは次式で表せます。
ここで、
- :DCゲイン
- :第1極
- :第2極
です。A(s)を図示すると以下の図になります。
またであることに注意してください。
ここでは第1極を10 Hz、第2極を1 MHzに置きました。
このモデルでは、周波数を上げるにつれて次のような変化が起こります。
- 第1極を超えると、ゲインは -20 dB/decade で低下し、位相は-90°回る
- 第2極を超えると、ゲインは -40 dB/decade で低下し、位相は-90°回る
- 位相は最終的に -180° に近づく
つまり、第1極と第2極の位置関係が、帯域と安定性を大きく左右します。
なぜ極配置が重要か
オペアンプでは、閉ループで安定に動作させるために十分な位相余裕が必要です。
一般に、位相余裕は60°以上あると扱いやすい設計になります。
2極モデルで安定性を確保する基本方針はシンプルです。
- 第1極は低い周波数に置く
→ 早い段階からゲインを下げる
- 第2極は十分高い周波数に置く
→ ユニティゲイン付近で余計な位相遅れを増やさない
要するに、ユニティゲイン周波数の近くでは、まだ“1極系に近い振る舞い”を保ちたいということです。
ユニティゲイン周波数を求める
オペアンプのゲインが1倍になる周波数を、ユニティゲイン周波数と呼びます。
これを とすると、次式が成り立ちます。
2極モデルの大きさは次式で表されます。
先述した「安定性を確保する基本方針」に基づくと、極の配置は原則として以下のように行います。
この配置に基づくと、以下の2つの近似が成り立ちます。
この2つをに代入します。
この式から、 は次式で表されます。
つまり、ユニティゲイン周波数は、DCゲイン と第1極 の積でほぼ決まるということです。
位相余裕を求める
最後にこの2次系の式から位相余裕を求めます。
はじめにユニティゲイン周波数のときのの位相を求めます。
第1項は、先ほどの を使うと、次式になります。
ここでは、A0がDCゲインで十分に大きいことを利用しました。
第2項は、先程のユニティゲインの関係より、次式となります。
したがっての位相は次式で表せられます。
ここで位相余裕(PM)の定義は、ユニティゲインのときの位相と、-180 deg.の差分です。
位相余裕も基本パラメータで表されることが分かりました。
この式からは以下の2つが分かります。
- が大きいほど、位相余裕は減る
- が高いほど、位相余裕は増える
つまり、ユニティゲイン周波数を上げたいなら第1極を上げたくなるが、そのままだと位相余裕が減るため、第2極も十分高く確保しなければならないというトレードオフがあります。
オペアンプのゲイン特性の設計例
ここでは、次の仕様を満たすように設計してみます。
- DCゲイン:120 dB()
- ユニティゲイン周波数:10 MHz
- 位相余裕:60°以上
使うのは導出した次の2つの式です。
これを設計条件に当てはめます。
この2つを解くと、、となります。
数値計算で答え合わせ
実際にこの近似設計で得られた、の2つの値を用いて、A(s)を数値計算してみました。
ユニティゲイン周波数は8.9 MHz、位相余裕は62.8 deg.となりました。
目標値の 10 MHz / 60° と完全一致ではありませんが、これは途中で近似しているためです。
特に、ユニティゲイン周波数が8.9MHzであるのに対して第2極の周波数が17.3 MHzです。
したがって、が成り立っていないことが分かります。
ただし、ラフな見積もりとしては、今回導出した近似式は十分に使えそうです。
お疲れ様でした。
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