2SC1815でディスクリートオペアンプを作ってみます。
はじめからシミュレーションすることもできますが、最初にざっくり手計算しておくと、
「どの段がゲインを稼いでいるのか」
「どこに支配極ができるのか」
「だいたいどのくらいの帯域になりそうか」
が掴めて、回路特性の見通しが良くなります。
この記事では、今回使う回路を
- カレントミラー
- 差動対
- 出力段
- 位相補償
の4つに分けて、開ループDCゲインと周波数特性を概算します。
基本構成
今回作るオペアンプは、最も作りやすく単純な構成とします。

今回の回路は、大きく見ると次の3段構成です。
- Q1, Q2, Q3 周辺:npn カレントミラーで各段のバイアス電流を作る
- Q4, Q5, Q6, Q7 周辺:差動入力段で最初の電圧増幅を行う
- Q8, Q3 周辺:出力段でさらにゲインを稼ぐ
さらに、差動対出力と出力段の間に 補償容量 Cc と 直列抵抗 Rc を入れて、開ループの周波数特性を安定化します。
一方で、このオペアンプは原理実証的な構成です。
汎用的に利用する上で足りない要素、致命的な欠点もあります。
原理実証回路がどのくらい使い物になるか?という疑問に答えるのも、今回の目的の1つです。
素子は入手しやすい以下のトランジスタを用います。
- npnバイポーラトランジスタ:2SC1815
- pnpバイポーラトランジスタ:2SA1015
カレントミラーで1 mAの基準電流を作る

左下の Q1 はダイオード接続された npn トランジスタで、ここに 1 mA を流して を作ります。
その を Q2, Q3 にも与えることで、ほぼ同じコレクタ電流を流す単純なカレントミラーにしています。
・VBEを求める
基本的なバイポーラの電流式は次式で表されます。
、の熱電圧です。
Isはデバイス次第で変わりますが、今回はSIMモデルから6 fAとします。
したがって、次式が成り立ちます。
この式を解くと
ここでは、Q1 が 0.67 V 程度の を作り、Q2 と Q3 がそれをコピーして 1 mA 近い電流を流すという動作です。
ただし、実際はカレントミラーによるベース電流の減少やコレクタ電圧の不一致の影響で、電流は完全一致しないことが多いです。
差動対のゲインの概算

pnpカレントミラー負荷を有するシンプルな差動対です。
Q4 と Q5 が入力差動対、Q6 と Q7 が pnp カレントミラー負荷です。
Q2 が作るテール電流は約 1 mA なので、平衡時には左右に約 0.5 mA ずつ流れます。
・差動対のゲイン
まず、入力トランジスタ1個あたりのトランスコンダクタンスは次式で表されます。
ここにIc=1mA/2=0.5mAと熱電圧を代入します。
出力抵抗 はEarly 電圧から求めるべきですが、ここでは npn と pnp をそれぞれ約 30 kΩ と見積もります。
合成抵抗としては、npnとpnpの並列の抵抗値です。
以上の値から、差動対の電圧ゲインは概算で以下の値になります。
荒い近似計算ではありますが、「差動対だけで数十 dB のゲインがある」と把握できました。
出力段のゲインを概算

出力段は1mAのカレントミラー負荷を有するエミッタ接地増幅回路です。
・出力段のゲイン
Q8の電流は1mAなので、gmは38.5 mSとなります。
roは、先ほどと差動対と同様に15 kΩとします。
したがって出力段のDCゲインは以下のようになります。
増幅段に流れる電流が差動対の2倍の1mAであるため、差動対のゲインの2倍(+6 dB)となっています。
位相補償
差動対出力と出力段の間には、補償用のコンデンサ と抵抗 が入っています。

・Ccの役割
Ccは位相補償を行うためのコンデンサです。
ここで重要なのは、出力段に電圧ゲインがあるため、差動対側から見ると Cc が大きく見えることです。
今回の場合、差動対出力側からはCcは約578倍されて見えます。
この大きく見えた容量が差動対出力ノードに大きな時定数を作るため、ここが支配極(第1極)になります。
・Rcの役割
Cc だけを入れると、位相を悪化させるゼロ点が現れます。
そのゼロ点を高周波へ追いやるために、に直列に を入れます。
ゼロ点は以下の角周波数に形成されます。
したがって、ゼロ点を十分高周波へ移す条件は
今回の出力段は なので、以下の値が目安です。
ゲインと周波数特性
・DCゲイン
DCゲインは差動対と出力段のゲインの積です。
・第1極
第1極は、差動対の出力抵抗と、出力段のDCゲイン倍されたCcの積で見積もられます。
Ccは1 nFとしました。
・第2極
第2極は出力段の極であると仮定します。
出力段の負荷容量は、オシロスコープのプローブ容量を想定し20pFとしました。
また出力段の出力抵抗は、高周波では1/gmと見積もれます。
したがって、第2極は以下と推定できます。
・ユニティゲイン周波数
ユニティゲイン周波数は、以前の記事で紹介したように以下の式で見積もることができます。
・位相余裕
こちらも、以前の記事で紹介したように以下の式で求められます。
まとめ
今回作成するディスクリートオペアンプの特性の見積もりが完了しました。
もちろん、以上の結果はかなり単純化した見積もりです。
次回は、この概算結果がシミュレーションとどの程度一致するかを確認します。
お疲れ様でした。

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